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精神科で治療ができる強迫性障害|早めに治して生活を快適に

強迫観念と強迫行為

パソコンを触る看護師

まとわりつく強迫観念

物事に強いこだわりを持つというのは珍しいことでもありません。程度の差はありますが、たいていの人は何らかの対象に対してこだわりを持っているものです。それが信念だったり道徳であったりする場合は、人格の立派な人として尊敬を集めています。そんなこだわりも度が過ぎると周囲の人を混乱に陥れ、トラブルの原因になりかねません。ある特定の事柄に対して異常にこだわり、家族や友人にまで何らかの行為を強制する人もいます。こうした行為を強迫行為と言い、強迫行為の元となるこだわりのことを強迫観念と呼びます。こうした強迫観念や強迫行為は、強迫性障害という心の病気によって生じます。いずれも精神科の病院を受診した場合、日常生活に支障が出るほどこだわりが強ければ治療が必要と診断されます。強迫観念は必ずしも強迫行為を伴っているとは限りません。病的に強いこだわりが存在するだけでも正常な生活が困難になってしまうものなのです。例えば失敗に対する過度の恐れから仕事ができなくなった人もいます。プロスポーツ選手や音楽演奏家が精神的な理由でプレーや演奏ができなくなる原因として、失敗に対する強迫観念的な恐怖が指摘されます。脳の神経細胞間で情報伝達を調節するセロトニンという物質は、強迫性障害の発症に深く関わっています。正常な状態ではセロトニンが作用して神経細胞から神経細胞へと電気信号が伝わっています。この病気を発症するとセロトニンの量が不足してしまい、情報がうまく伝わらなくなるのです。精神科の病院ではこうした症状を改善させるため、うつ病治療にも使われるSSRIなどの抗うつ薬を処方しています。SSRIは選択的セロトニン再取り込み阻害薬とも呼ばれ、脳内のセロトニン減少を防ぐ薬です。うつ病もまた同じようにセロトニンの減少が原因の1つと考えられています。いずれもセロトニンの働きが正常化したことで症状が大きく改善された人は多いものです。

強迫行為から解放される術

強迫観念だけでなく強迫行為を伴う症例では、しばしば周囲の人も巻き込んで騒動を引き起こすことがあります。仕事をする際に一定の決まった順番を頑なに守ろうとする人の例では、共同作業で支障が出かねません。作業を手伝う人がその順番を守らないことでトラブルに発展すると、作業の中断を招いてしまいます。こうした強迫行為の背後には、必ず何らかの強迫観念が潜んでいます。作業手順に固執する人の例では、それが安全性に基づく正当な理由であれば何ら問題ありません。強迫観念に該当するケースでは、その作業手順は単なる儀式的な意味しか持たないものです。多くの症例では本人もその無意味さを自覚していますが、それでも強迫観念を頭から拭えないでいます。そのため周囲の人ばかりでなく、強迫観念を抱く本人が大きな苦痛に悩まされているのです。家族や職場の同僚とともに自分自身をも苦しめる強迫行為をやめるには、精神科の病院で実施している認知行動療法が有効です。強迫性障害の治療で多く行われている曝露反応妨害法という方法は、一種のショック療法と言えるかもしれません。この治療法では、患者さんを苦しめている強迫観念に敢えて直面させるように仕向けます。その上で強迫行為を我慢するようにしていくのです。一見乱暴なやり方のように思えるかもしれませんが、この過程を通じて患者さんは長年苦しめられてきた強迫観念を克服していきます。一方ではセロトニンを調節するための薬物療法と併用しながら、曝露反応妨害法を実施していくことで相乗効果が生まれるのです。以上のような治療法は精神医学の分野で科学的な研究が進められてきた結果、現在までに確立した方法です。科学的根拠に基いたこの治療法によって、数多くの強迫性障害患者が無意味なこだわりと行為から解放されています。精神科ではこうした科学の力と病院スタッフのマンパワーによって、心の病から患者さんを解き放ってきたのです。